2021-01-01から1年間の記事一覧

サム・ゲンデル『Inga 2016』を聴く(1)

はじめに 折坂悠太との共演、ローリー・アンダーソン曲のリミックスなど、21年も終わりに近づくのにトピックの尽きないサム・ゲンデル。そんな彼の21年の仕事をまとめた「2021年のサム・ゲンデル」、キャリアを時系列順で俯瞰した「サム・ゲンデルとは誰か?…

サム・ゲンデルとは誰か?

まえがき 幼少期~南カリフォルニア大学へ 音楽活動開始~2016年 2017年 2018年 2019~2020年 プレイリスト ディスコグラフィ Inga Sam Gendel オリジナル・アルバム 編集盤 サウンドトラック with Sam WIlkes with Carlos Nino with Ethan Braun with Josia…

レビュー:Tirzah『Colourgrade』

『Devotion』(18年)の実験的なR&Bサウンドでメディアに注目されたロンドンのアーティスト、Tirzahの2ndアルバムがDominoよりリリースされた。長きにわたる共同制作者、Mica Leviをはじめロンドンのミュージシャン仲間を迎え、彼女自身の出産というパーソナ…

サウンド・マン自らの仕事を語る

グリン・ジョンズ著・新井崇嗣訳『サウンド・マン~大物プロデューサーが明かしたロック名盤の誕生秘話』シンコー、2016年。 ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、イーグルス、ザ・フー、ビートルズ、クラッシュなどにかかわったエンジニア/プロ…

歓喜の歌

Wilco『Ode To Joy』 『Ode To Joy』制作にあたり、バンドのフロントマンであるジェフ・トゥイーディはリズムマシンを使ってドラム・トラックを打ち込み、そのうえでドラマーのグレン・コッチにこう伝えたという。「グレン、この曲で君はテクニックを見せつ…

2021年のサム・ゲンデル

0. まえがき 2021年に入ってから怒涛のペースでリリースを続けるサム・ゲンデル(Sam Gendel)。そのリリースをまとめたものがなかったので作ってみた。サムの場合、ソロ・ワークに加えて活発なコラボレーションがあり、そのコラボ相手の音楽性もジャズ、フ…

即興と編集

先日『イン・ア・サイレント・ウェイ』コンプリート・セッションの「Shhh/Peaceful」を聴いていてスタジオ盤との大きな違いに気が付いた。同曲はセッションで演奏されていた際には、明確なテーマ部を持っているということである。 マイルス、ハービー、ジョ…

ミッチェル・フルーム Mitchell Froom ④ 若きチカーノの栄光と死 ―Los Lobos 「La Bamba」—

目次 目次 0.これまでのあらすじ 1.87年、リッチー・ヴァレンス伝記映画の公開 2.チカーノとしてのアイデンティティを追求したロス・ロボス 3.リッチー・ヴァレンスの生涯と功績 4.ロス・ロボスとミッチェル・フルーム、その出会いとは? 5.過去…

ミッチェル・フルーム Mitchell Froom ③ 盟友チャド・ブレイクとの出会い ーデル・フエゴスおよびリチャード・トンプソンー

前2回はこちら ここまでサポート・ミュージシャンとしての活動、ソロ・アルバム、そしてクラウデッド・ハウスのプロデュース…とフルームの歩みを追ってきたが、彼の不可分のパートナーとして、また、この30年余においてもっともユニークなエンジニアの一人…